ハンガリーから!フルーツブランデー・パリンカを飲んでみよう。
世界中で愛されているブランデーですが、その土地によって材料や作り方にこだわりがあります。
ブランデーの王道といえばフランスのコニャックやアルマニャックでしょうが、それ以外にもそれぞれの地域に深く密着した歴史を持つブランデーが存在するのです。
ハンガリーのブランデー・パリンカもその一つ。
どんなものなのでしょうか。
ハンガリーってどこだっけ
世界地図でハンガリーを指して!
と言われて、すぐにさせる人は失礼ながらあまりいないのではないでしょうか。
ハンガリーは中央ヨーロッパにある共和制の国家です。
西にはオーストリアとスロベニア、東にはウクライナとルーマニア、北にはスロバキア、南はセルビア、南西にはクロアチアがあります。
内陸国ですから海はありません。
国土の大部分はなだらかな丘陵地帯。
東南部の平野には肥沃な農地が広がっています。
首都ブダペストは世界で3番目に地下鉄が通った都市でもあります。
また、各地に温泉が湧いており、ヨーロッパの中でも温泉大国として有名なのだとか。
この辺は日本に通じるものがありますね。
比較的温暖な大陸性気候で、農業には適しています。
特にトカイ地方のトカイワインは世界的にも有名です。
パリンカってどんなブランデー?
パリンカ(Pálinka)はカルパチア盆地周辺に起源を持つフルーツブランデーです。
ヨーロッパ中世時代に生まれたと言われています。
昔から誰もが自分の庭にある材料を使って気軽に造っていたようで、オリジナルレシピを持つ家庭も多いとか。
原材料はフルーツですが、最も一般的なのはプラム、アプリコット、リンゴ、チェリー、ナシです。
同じようなフルーツブランデーはチェコ共和国やポーランド、ルーマニアなどでも見られます。
どうやってつくるの?
パリンカはフルーツブランデーですから、造り方もブランデーとほぼ同じです。
原材料をマッシュし、発酵させ、蒸留させます。
蒸留は伝統の蒸留釜で2回ほど行われます。
ハンガリーとパリンカ
パリンカはハンガリーの文化と深く関わっています。
自家製のパリンカを作り楽しんできたのですから、人々にとっては生活に欠かせない飲み物ということが出来ます。
ハンガリーの歴史の中でパリンカを見つけるには14世紀まで遡らなければなりません。
歴史書には「ハンガリー王チャールズのためのアクアヴィータ」という記述が見えます。
このブランデーはローズマリーがブレンドされていて、関節炎に苦しんでいた王とその王妃の為の薬として使われていたそうです。
パリンカの最初の記述はそのようなものでしたが、パリンカが王侯貴族のものであったのかというとそうではなく、実際は農民達が裏庭の材料で造るような庶民的なブランデーでした。
しかし17世紀に入ると、パリンカの製造は禁止されてしまいます。
自家製が流行りすぎ、事故や事件が多発したためです。
その後2002年、EUによってパリンカはハンガリーのアルコール飲料として認められ、現在に至ります。
もともとは農民達の飲み物だったので、どこか泥くささも感じる飲み物でしたが、近年に入ると流行に敏感な若者たちの間で流行りだし、今ではパリンカを置いていないバーはハンガリーにはありません。
それほど広く親しまれているのですね。
パリンカの楽しみ方は…
ハンガリーの人々は朝、パリンカをぐいっとやることがあるそうです。
パリンカは眠気覚ましと捉えられていて、特におじいさんおばあさんの世代に多く見られます。
また、パリンカは消化を助けるとも考えられています。
ですから食後にも多く飲まれるのです。
さらに二日酔いの治療薬としても最適と考える人も。
もしハンガリーで二日酔いになり、パリンカを進められたら丁寧にお断りする事をおすすめします。
迎え酒に医学的根拠は全くないので、二日酔い後にまたパリンカ、というのは理にかないません。
パリンカは甘くて飲みやすいものが多いですが、アルコール度数も高めです。
飲みすぎには注意が必要なのです。
また、冷たくしすぎるとせっかくのフルーツの風味が薄くなってしまうので、常温で頂くのがおすすめですよ。
眠気覚まし、食後、その他一般的なのは食前酒として。
ディナーの前にショットグラスで軽く頂くのです。
つまりパリンカはハンガリーの人にとってはいつでも飲みたいブランデーということでしょうか。
パリンカにも厳しいきまりがあるのです
ハンガリーのパリンカはEUおよびハンガリーの法律で厳しく規制されています。
これは「パリンカ法」とよばれ、パリンカの定義にかかわるもの。
どんなものかといいますと、以下の通りです。
1.ハンガリーで栽培された果実のみを原材料とする。
添加物を含んではいけない。
2.ハンガリーで栽培から発酵、蒸留、ボトル詰めまで行う。
3.蒸留の際のアルコール度数は86%を越えてはならず、ボトル詰めの際は少なくとも37.5%でなくてはならない。
このような決まりが出来たことで、粗悪品や偽物の流通を防ぐことが出来るようにはなったのですが、ちょっとした問題も起こりました。
粗悪品でも偽物でもなく、古くからパリンカを作っていたブランドも、この基準に満たないものはブランド名の変更を余儀なくされました。
また、EUはパリンカをハンガリーの専売特許としたため、他のヨーロッパ諸国に混乱が生じてしまいます。
ハンガリー以外にもフルーツブランデーを作っている国があったからです。
何が問題かというと、同じようにフルーツブランデーを作っている国はハンガリーにロイヤリティを払わなければならないという意見が出てきたこと。
しかし、パリンカ以外にも他をオリジンとして持つフルーツブランデーは多数存在します。
他国からすれば納得できません。
そのため、「パリンカ」という名称さえさければ、自由に名前を付けて販売が出来るようになりました。
現在ではフルーツブランデーは国によって様々な名称で呼ばれています。
おすすめのパリンカは…
パリンカ法によって原産地保護法によって保護されているハンガリーのパリンカは8つあります。
1.Szatmár地方のプラムパリンカ
2.Kecskemét地方のアプリコットパリンカ
3.Szabolcs地方のリンゴのパリンカ
4.Békés地方のプラムパリンカ
5.Gönc地方のアプリコットパリンカ
6.Újfehértó地方のサワーチェリーのパリンカ
7.Göcsej地方のナシのパリンカ
8.Pannonhalma地方のポマースパリンカ
これらのパリンカは厳しい原産地呼称統制法によって保護され、この地域以外のパリンカはその土地のついた名前を使用することができません。
どれもおいしそうなパリンカですが、おすすめしたいのはリンゴのパリンカです。
サボルチという地域は世界的にも有名なリンゴの産地で、ジョナサン、ジョナゴールド、ゴールデンデリシャス、レッドデリシャス、アイダレッドなどの品種が栽培されています。
パリンカ造りには主にジョナサンが使用されています。
Panyolai Elixír Szabolcsi Apple 42%
透明なカラーが綺麗なパリンカです。
エレガントな背の高いボトルのパリンカはハンガリーではとてもポピュラー。
こちら名産地サボルチのリンゴを使用して造られています。
アルコール度数は42%。
食前・食後に気軽に頂けるすっきりとした味わいです。
おすすめは食前酒として、常温で。
パリンカ専用のショットグラスをおすすめします。
ハンガリーではパリンカをこのグラスで2、3杯頂いてから食事とワインに移るのが一般的。
ポガーチャというハンガリー伝統のパンと共に頂くのもよく見られます。
まとめ
日本人にとってはあまり馴染みのない中欧地域ですが、知ってみればおいしい食べ物もブランデーもたくさんありそうです。
特にフルーツブランデーは日本でも女性に人気が出てきているところ。
このパリンカも是非チェックしてみたいですね。
ネットならわずかですが、購入可能なところもあるようです。
ハンガリーのフルーツブランデーに興味がでたら、是非探してみて下さいね。