アジアの「非」五大ウイスキーについて
五大ウイスキー、という言葉をお聞きになったことがある方は多いと思います。
これら、アイリッシュ、スコッチ、カナディアン、アメリカン、ジャパニーズの五地域がウイスキー生産の90パーセント以上を占めるともいわれます。
気候や地質、水質から自ずとウイスキーに適した場所は限られてしまうのかもしれません……が、「非」五大ウイスキーの中にも逸品はあるようです。
ここでは、非五大ウイスキーの中からアジア産のものを少しだけご紹介しましょう。
蒸し暑い台湾のウイスキー
操業開始は2008年と大変に若いながら、現在国際的にも高い評価を獲得しているブランドが、台湾の「カバラン」です。
アイラのツーンとしたのが飲みたいんだ、というときには向かないかもしれませんが、大変よくできたウイスキーであることは確かです。
甘くフルーティーで、ナッツ系・果実系の気分の時にはおすすめできます。
カラカラのインドでシングルモルト
こちらはもっと歴史は長いのですが、インドの蒸留所でも、誇りあるシングルモルトが造られています。
「アムラット」というブランドが評価が高く、実際にその味わいは高レベル。
アムラット・フュージョンなどは、柑橘あり、カカオあり、不思議なもので、先入観もあるのかもしれませんが、インドを感じる一杯です。
ただし……インディアンウイスキーで「シングルモルト」「ピュアモルト」といった表記がない銘柄の場合、ちょっとモルトを加えました、というだけでウイスキーを名乗っている場合もありますのでご注意ください。
それはそれで楽しめそうな気もしますけれどもね。
暑いところで熟成か
以上に挙げたような台湾とインドのウイスキーについてまず感じることは、ちょっと暑過ぎるんじゃあないか、ということです。
例えばスコッチであれば寒冷で穏やかな気候変化のもとで何十年もかけ、ゆっくりと熟成されていき、そのことが深みや奥深さを作り出す訳ですが、南アジアや極東南部の暑さでは、熟成は速く進みすぎてしまうでしょう。
一般に、気温が高いほど樽の成分は急速に溶け出します。
良い香りも、好ましくないものもです。
また、アルコール分よりも水分の方が多く揮発してしまうため、熟成中に目減りする量も多くなり、アルコール度数も樽詰めした時よりも高くなるような、「異常な」熟成が基本となっているのではないかと考えられます。
しかし、カバラン・クラシックシングルモルトはインターナショナル・レビュー・オブ・スピリッツ・コンペティション(IRSC)やインターナショナル・スピリット・チャレンジなどといった多くの品評会で何度も金賞を獲得しており、文字通り世界が認めるウイスキーとなっています。
新しい蒸留所ですので熟成期間は短いものに違いありませんが……驚きだとしか言いようがありません。
ラインナップも、ウッドフィニッシュにこだわったものやカスクストレングスのものまで、自信満々の品揃えで、いずれもまた高い評価を受けているようです。
また、インドのアムラットですが、こちらも同IRSC他多くのコンペティションで優秀な成績をおさめています。
そういえば日本もそうだった
さて、現在は世界五大ウイスキーという括りになっているわけですが……以上のようなこういった新しいウイスキーに関して思い出すのは、他ならぬジャパニーズウイスキーの歴史です。
コンペティションに積極的に参加しようとする気質ではなかったこともあり、2000年代まではジャパニーズウイスキーなどは海外では誰も知らなかったといいます。
しかし、アピールしてみたところ大いに評価され、現在ではウイスキー好きでサントリー「山崎」やニッカ「余市」を知らない人はいないでしょう。
〇大ウイスキー、というのも、流動的なものなのでしょうね。
まとめ
ウイスキー好きの方でもあまり馴染みはないかもしれない、アジアのブランドについて少しご紹介しました。
アジアとはもちろん日本を含むわけですが、今やジャパニーズウイスキーはトップブランドです。
日本のウイスキーはアピールが上手ではなかったもののだんだんと評価されてきたように、比較的新興ながら積極的に存在を主張して確かな評価を獲得している台湾やインドのウイスキーが、すぐに世界〇大ウイスキー、の地図を変えていくかもしれませんね。