酒どころ新潟! おいしい日本酒は端麗辛口
新潟の酒は淡麗辛口といわれますが、淡麗辛口とは、クセがなく、すっきりして、あとに残らないという意味です。
五百万石と名付けられた酒造好適米を使い、軟水で仕込んで、低い気温で日数をかけてゆっくり発酵させるため、上善(じょうぜん)水如と称される料理を引き立てる日本酒が多く作られています。
また、越後杜氏は日本三大杜氏の一つで、新潟県内に数ある蔵元のほぼ全てで越後杜氏が酒造りを行なっています。
日本酒生産量は兵庫・京都についで第3位であり、久保田、八海山、越乃寒梅などの有名銘柄が数多くある有数の酒どころです。
新潟の酒の特徴
冬期に仕込む酒の酒質が良いとされ、寒造りが盛んに行なわれるようになったのが江戸時代中期といわれます。
それ以降、酒造りが冬に限られた仕事となりましたので、農民が出稼ぎとして冬場だけ杜氏を請け負うようになり、やがて杜氏が率いる酒造りの職人集団が形成されていったと考えられます。
新潟の冬は気温が低く、雪が雑菌を拭い去りる絶好の酒造環境です。
軟水を使った仕込みは発酵が緩慢で不安定であることから、より丁寧な仕込みが求められますが、全国の酒蔵で技を磨いた越後杜氏がその技術力で克服し、軟水の発酵の遅さを逆手に取った長期低温発酵を普及させました。
その結果、味にふくらみがあり、しかも、味がきれいで、飲み飽きない淡麗辛口の酒ができたのです。
さらに、スッキリとした味わいを醸す酒造好適米も開発され、精米歩合を60%以下に精米して仕込む吟醸酒は味もキメ細かく、きれいでフルーティーな味わいです。
酒造好適米
数ある酒造好適米の中でも最高に米作りに適しているとされる山田錦は、山田錦は粒が大きく粒が揃っており、たんぱく質が少なく、心白(米粒の中央にある白く不透明で組織の粗いデンプン質)が大きいことから酒造に最も適した米とされます。
その反面、稲穂が倒れやすく、病気に弱いという弱点があり、育成できる北限は、新潟県上越市あたりといわれています。
五百万石は昭和31年に新潟県農業試験場が新200号と菊水の交配によって育成し、昭和32年に品種登録した酒造適合米です。
心白は大きいものの、割れやすいため高度な精白要求に耐えられない難点は残りますが、東北南部から九州北部地帯まで幅広く栽培されています。
五百万石で仕込まれた日本酒は、クセがなく淡麗でスッキリとした味わいに仕上がります。
越後杜氏
宝暦4年(1754年)の勝手造り令以降、日本酒の製法が四季醸造から寒造りへ変わっていきました。
そのころから、冬場の酒造りのために新潟から関東地方や愛知県へと出稼ぎに行ったのが、越後杜氏の発祥といわれます。
出稼ぎ先で最先端の西国流を工夫して、越後流といわれる酒造り技術を編み出し、その技を磨き上げてきました。
越後杜氏には地区ごとに呼び名があり、四大杜氏と呼ばれているのが、頸城杜氏、刈羽杜氏、越路杜氏、野積杜氏です。
杜氏とは酒蔵で働く蔵人(職人)たちの長で、酒蔵ごとに集団で働き、酒造りの技術を競ってきました。
日本酒は緻密で精巧な醸造技術で造られる世界最高のアルコール度数を誇る醸造酒です。
その技術を勤勉さと粘り強さ、そして優れた技術と品質へのこだわりをもつ越後杜氏たちが支えているのです。
新潟県のおすすめ銘柄
宮尾酒造 村上市
新潟県北部・村上市の門前川右岸に、文政2年に創業し、北前船を持ち廻船業も営んでいた名家で屋号は大関屋です。
村上市は五百万石や高嶺錦など良質の酒造好適米を産出する米どころで、酒造用水は三面川の伏流水で、きめ細かな甘みを持つ軟水を使用しています。
当代で11代目になりますが、初代より造り続ける銘酒「〆張鶴(しめはりつる)」は、長い歴史と伝統に育まれた銘柄で、酒質は淡麗旨口、本醸造が定番ですが、「〆張鶴 純 純米吟醸」がおすすめです。
村上市岩船郡産の五百万石を歩合50%まで精米して使用し、柔らかく膨らみのある味と優雅な旨み、スッキリと綺麗な後味、滑らかで口当たりがよく品のあるお酒です。
石本酒造 新潟市
新潟の酒造界をけん引してきた蔵元で、明治40年創業以来、淡麗辛口ですっきりとした味わいの酒を造り続けています。
酒造用水は阿賀野川と信濃川を結ぶ小阿賀野川に囲まれた砂丘地を水系とした豊富な良水です。
おすすめは45年ぶりの新銘柄「越乃寒梅 純米吟醸 灑」で、灑には水を注いで洗い清める、さっぱりとしたさまなどの意味があります。
精米歩合55%に磨いた五百万石と山田錦使用し、低温でゆっくり発酵させ、粕歩合を高くして、上品な吟醸香を醸し出しています。
柔らかい口当たりで、のど越しがよく、穏やかな香りと飲みやすく、飽きの来ない味わいに仕上げられています。
どんな料理にもよく合う越乃寒梅らしい味ですが、純米酒らしい旨みも感じられるお酒です。
朝日酒造 長岡市
久保田屋の屋号で天保元年に長岡市で創業、180年以上の歴史と伝統を持つ、新潟の淡麗辛口を代表する蔵元です。
信濃川の支流・渋海川のほとり朝日神社境内(来迎寺礫層)から湧き出る宝水が酒造用水として使われ、明治中期発売の「朝日山」は蔵を代表する銘柄として根強いファンに支えられています。
おすすめは昭和61年に発売された「久保田」シリーズの最高峰「久保田 萬寿 純米大吟醸」です。
五百万石を歩合50%まで精米し、醸し出された吟醸香は嫌味がなく落ち着きが感じられ、なめらかでまろみのある舌触りと調和の取れた旨み、すっきりとクセのない後味があります。
フルーティーでほのかな甘さもある名酒で、日本酒が苦手な方でも楽しめます。
八海酒造 南魚沼市
越後三山の一つ、八海山の麓・新潟県南魚沼市にあり、創業は大正11年で、新潟を代表する銘柄「八海山」の蔵元です。
桂山の裾野の巨岩から湧き出る「雷電様(らいでんさま)の清水」を酒造用水として使用し、雪地帯でも知られる魚沼の寒さの中で、低温長期発酵で水と酒米を最大限に活かす酒造りへのこだわりが「八海山」の綺麗な酒質を生んでいます。
おすすめは「純米吟醸 八海山」、麹米に山田錦、掛米に山田錦、美山錦、五百万石などを使い、歩合50%で精米しています。
淡麗辛口で、きれいでなめらか、ソフトな香味と米の旨み、穏やかな喉越しが味わえます。
優しい香り、ほどよい味のふくらみ、酸と旨みのバランスが絶妙で、キレのある辛口の純米吟醸酒です。
青木酒造 南魚沼市
南魚沼市塩沢にあり、享保2年創業の老舗酒蔵で、主要銘柄である「鶴齢(かくれい)」とは、長寿といわれる鶴にあやかって命名されました。
酒造用水は酒蔵敷地内にある井戸(地下約80m)から巻機山の伏流水を汲み上げており、新潟では珍しいミネラルを多めに含んだ軟水です。
この水が、淡麗辛口が多い新潟のお酒の中で、甘味や旨味などが残る「鶴齢」の特徴を造りだしているのでしょう。
「鶴齢 純米吟醸」は、新潟県産の酒造好適米・越淡麗を使い、歩合55%まで精米し、創業以来300年続く伝統の技で醸された、淡麗でキレの良さと芳醇な旨みが調和し、飲み飽きない吟醸酒で県内外で高く評価されています。
丸山酒造 上越市
東頚城丘陵の裾野、明治30年創業で、名だたる豪雪地帯の新潟県上越地区を代表する蔵元です。
酒造用水は敷地内の井戸から湧き出る超軟水、淡麗辛口が主流の新潟県にあって、芳醇でやや甘口な味わいを守り続けています。
おすすめは「雪中梅 純米酒」で、終期限定品ですが、秋まで蔵元で貯蔵されることで、さらにまろやかな味わいになっています。
麹米に五百万石、掛米に山田錦を使い、精米歩合は63%、春限定の特別純米酒にくらべ、甘さが控えられ純米酒らしい旨みのあるお酒です。
まとめ
日本酒は、米、麹・酵母と水の組み合わせだけでなく、気温や湿度そして仕込み中の空気の質によっても味が変わります。
その組み合わせは無数にありますから、地域ごとに味に特徴ができるのです。
今回ご紹介しました新潟は酒どころ、美味しい日本酒といえば新潟です。
酒造り向かないといわれた軟水を使いこなし、低い気温で日数をかけてゆっくり発酵させる低温長期発酵で、淡麗辛口の酒を作り出しました。
そして、新潟の冬も味方しています。
降り積もる雪が空気中の雑菌を拭い去り、天然のエアクリーナーの役割をして、雑菌を防いでいることも忘れてなりません。