アメリカ産はバーボンじゃない?「アーリータイムズ」ってどんなバーボン?
現在、アメリカ国内のみではなく、世界中に人気が広がっているバーボン。
人気の銘柄のほとんどはバーボンの発祥地「ケンタッキー州」に集中しています。
人気バーボンの中でも、特に知名度が高いのは「アーリータイムズ」。
バーボンを飲んだことが無くても、聞いたことがあるのではないでしょうか。
実はこのアーリータイムズ、アメリカでは「バーボン」ではないのです。
バーボンとアーリータイムズについて見てみたいと思います。
目次
バーボン・キャピタル・ケンタッキー!
日本でケンタッキーというと「フライドチキン」というイメージ。
しかし、アメリカでケンタッキーと言えば「ダービー」と「バーボン」です。
バーボンは今やアメリカを代表するウイスキーで、アメリカ以外の国でも高い人気を誇っています。
オーストラリアでは飲まれているウイスキー類の60%をバーボンが占めているほどの人気だそうです。
日本でもジム・ビームのハイボールが人気を集めていますし、知名度も高まっていますね。
そんなバーボンはケンタッキーで生まれました。
そして現在も、有名どころのバーボンはほとんどケンタッキー州内で作られているのです。
バーボンって…どういうもの?
世界中にファンを持つバーボンですが、一般的なウイスキーとの違いをご存知でしょうか。
バーボンと呼ばれていても、実は「アメリカン・ウイスキー」の一つ。
しかし、ある特定の条件を満たすと「バーボン」と記すことができるのです。
バーボンの条件を見てみましょう。
- アメリカ合衆国内で製造されていること。
- 原材料使用するトウモロコシは51%以上であること。
- 新品の炭化被膜処理を施されたオーク樽を熟成に使用すること。
- 蒸留はアルコール度数80%以下で行われること。
- 熟成樽に入れる前の原酒は、アルコール度数62.5%以下であること。
- ボトリングの際のスピリッツはアルコール度数40%以上であること。
- 着色料を使用しないこと。
これらの条件を全て満たしたものだけが「バーボン」とラベルに明記することが許されます。
バーボンの始まりは1789年と言われています。
これはアメリカ合衆国建国の年です。
つまり、バーボンの歴史はアメリカの歴史という事もでき、アメリカにとっては「ナショナル・リカー」とも言えるかもしれません。
ケンタッキーVSその他のバーボン?
アメリカには悪名高き「禁酒法時代」がありました。
これによってバーボンも壊滅的なダメージを受け、ウイスキー業界は立ち直るのに相当の時間を要したと言われています。
禁酒法時代でも、バーボンの本場ケンタッキーには「医療用」としてバーボンの製造を許された蒸留所がいくつかありました。
そのため、他の地域では失われてしまった蒸留技術や設備が今に残っているのです。
そんなケンタッキーではバーボンはまさに「ケンタッキーのお酒」。
ケンタッキー州知事や、バーボンフェスティバルが開かれるルイビル市の市長は「バーボンはどこででも作られるが、ケンタッキー産でなければバーボンではない」と言い放ちました。
それほどにケンタッキーの人びとにとってバーボンは「誇り」とも言える存在なのです。
実際のところ、歴史ある蒸留所の全てはケンタッキーにあると言って過言ではなく、禁酒法以前からのクラシックな味わいを楽しめるのはケンタッキーのみと言えるかもしれません。
小規模蒸留所の台頭!
近年アメリカでは蒸留所設立に関する規制が緩くなった州が増え、小さな蒸留所が乱立しています。
個人の趣味の延長のような蒸留所が多いのですが、中にはこだわりをもった本格派も登場しています。
そんな蒸留所で作られたバーボンが、近年世界的にも高い評価を受けるようになりました。
小さな蒸留所で作られたバーボンは個性的で、独創的。
ハーブの味わいをつけたものなど、クラシックなバーボンには見られない斬新さが人気となりました。
バーボンはアメリカ国内ならどこでつくられてもOKです。
そのため、ケンタッキー州産ではないバーボンがあちこちにみられるようになりました。
しかしバーボンキャピタルのケンタッキー州に住む人々にとってはケンタッキー州以外で作られたものは「バーボンではない」のです。
ケンタッキー州の代表的バーボンの一つ!アーリータイムズ
バーボンと言えば、有名銘柄がいくつか浮かびます。
ジム・ビーム、フォアローゼス、ワイルドターキー…。
そんな有名どころのバーボンの一つが「アーリータイムズ」です。
アーリータイムズを製造・販売しているのは「ブラウン・フォアマン社」。
アーリータイムズ以外にもジャックダニエル、ウッドフォードリザーブなどもこのブラウン・フォアマン社が販売しています。
アーリータイムズの蒸留所は…やっぱりケンタッキーにある!
アーリータイムズが製造されているのは、ケンタッキー州ルイビルの「ダウンタウン蒸留所」です。
もともとの始まりは「アーリータイムズ・ステーション」という村。
1860年だったと言いますから、かなり古い歴史を持っているブランドです。
アーリータイムズがアメリカで広く知られるようになったのは1920年代のことでした。
アメリカは丁度禁酒法に入っていましたが、アーリータイムズは「医療用」として製造を許されていたのです。
禁酒法時代にも伝統を途切れさせることなく、現在まで続く数少ないバーボンブランドの一つなのです。
アーリータイムズには2つの種類がある
アーリータイムズにはブラウンのラベルと、イエローのラベルの2種類が存在します。
この2つの違いは、原材料。
それぞれ違った味わいを楽しむことが出来ます。
飲み比べてみるのもおすすめです。
アーリータイムズ イエローラベル
トウモロコシ79%、ライ麦11%、大麦モルト10%の割合で製造されています。
ライトな口当たりが特徴。
甘い香りとキレの良い後味を持ち、バーボン初心者におすすめのバーボンです。
熟成中にできた不純物を濾過し、より純粋でスムーズな味わいを楽しむことができます。
アーリータイムズ ブラウンラベル
トウモロコシ72%、ライ麦18%、大麦モルト10%の割合で配合されています。
オークのコクと香りが際立つ繊細なバーボンウイスキーです。
マスターブレンダーが厳選した原酒をブレンド。
濾過工程を二度行うことで香りは強く、味は円やかになりました。
華やかで繊細な味わいを楽しむことができます。
日本向けの限定品です。
アーリータイムズはアメリカでは「ケンタッキー・ウイスキー」?
禁酒法以前からの歴史を持ち、新興の蒸留所のバーボンとは一線を画す「アーリータイムズ」。
世界40カ国以上で販売され、バーボン売上1位を獲得するほどのバーボンですが、アメリカ国内では「バーボン」とは表記されていません。
アーリータイムズは「ケンタッキー・ウイスキー」とだけ記されるのです。
これはなぜかと言いますと、アメリカ国内で販売されているアーリータイムズは熟成に使用する樽に「再利用の焦がしオーク樽」を使用しているから。
バーボンの規定では「新品」の樽を使用しなければなりません。
この規定から外れてしまうため、アーリータイムズは「バーボン」ではないのです。
しかし、輸出用に製造されているバーボンはれっきとした「バーボン」。
熟成に焦がしたオークの新樽を使用しており、本物のバーボンという事が出来ます。
「本物の」バーボンを堪能したいなら、アメリカ国内向けではなく、輸出向けが妥当ということになりますね。
まとめ
バーボンキャピタル・ケンタッキー州で作られ、古い伝統と歴史を持つ「アーリータイムズ」。
人気・知名度共に高いブランドですが、アメリカ国内用と国外用では製造法が異なります。
バーボンの規定に則ったものを試したいなら「アメリカ国外用」、アメリカで飲まれているものを楽しみたいなら「アメリカ国内用」がおすすめです。
もしアメリカにご旅行の予定があれば、アメリカ版「アーリータイムズ」もいいお土産になるかもしれませんね。