バーボンのイメージ、誤解していませんか
ワインやブランデー、あるいは同じウイスキーでもスコッチなどに比べると、バーボンウイスキーのイメージは少し野暮で武骨なものかもしれません。
安価なこともあり、西部劇的と言いますか、荒くれ者のカウボーイや密造人、禁酒法なんかに結びついた印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
しかし、現代のバーボンは実は、多くが大変に洗練された一品です。
ガンマンや決闘のことは少し忘れて、改めて見直してみませんか。
そもそも「お坊ちゃん」
そもそも、バーボンは贅沢に造られたお酒です。
熟成に使ってよい樽は新品のみ。
その樽は樹齢100年以上も経つオークを柾目でとった木材から作られ、材料からして安価な家具で使うものなどとは違います。
柾目でとる、とは丸太の中心から放射状に材を切り出していくというもので、無駄になってしまう部分も多く、大変贅沢な方法です。
また、強くチャーされたバーボン蒸留液用の新樽は、その後世界中で何度も使われるリフィル(再利用)の樽の文字通り一番手であり、焼きたての一番「おいしい」成分を原酒に与えることになります。
そこに含まれる木の香りなどは好みの問題ではあるのですが、少なくともバーボンは「一番煎じ」なのですね。
スコッチ等では穏やかな変化が望まれますが、様々なノウハウを磨き上げてきたバーボンの有名どころは、決して不快な雑味を加えることなく比較的急な熟成工程を仕上げます。
エリートなのは実は、バーボンなのです。
バーボン?安いお酒なんじゃ?
上を見ればどんなものだってありますが、一般的に言って、確かに普通のバーボンは高価なお酒ではありません。
しかし、安いからといって、そのことを以って一段低く見てしまうのはもったいないことです。
なぜ比較的安いのかというと、これは農業・工業的に相当な経験値があり、造るにあたって失敗が少ないのはもちろん、大量に造れる安定性、スケールメリットがあることが大きいでしょう。
また、熟成期間の短さも理由の一つです。
例外はありますが、バーボンはスコッチ等と違い、何十年も寝かせることはしません。
これは採算の面で早く切り上げているからではなく、アメリカ中東部の気候がそうさせています。
気温が高く年間通じての寒暖の差も大きいため、熟成が速く進むのです。
樽が小さめなこと、前述の「焼きたて」の成分は速く原酒に移ることなども、バーボンの熟成期間を短いものに抑えています。
寒冷なスコットランド等では熟成期間は長くなり、その間のコストがどうしてもボトルに乗ってしまいます。
それはそれでよいのですが、ベストな状態を短い期間で造り出せるバーボンにはお値段の面で確かなメリットがあるといえるでしょう。
あんまりしない?バーボンのテイスティング
バーボンをストレートで頼むと、チューリップグラスやワイングラスではなく、ショットグラスで出てくることが多いです。
仰ぐようにキューッとやってカウンターにターンと叩きつける、あのイメージがバーにも客にもあるのかもしれませんが……改めてじっくり一杯を味わってみてはいかがでしょうか。
ぜひ今度、良い水を用意し、チューリップグラスにストレートで、スコッチのように香りから楽しんでみることをおすすめします。
バーボンコークもいいものですが、そればかりではなく、しっかりとした香りや味、意外と長く残る深めのフィニッシュなど、新しい発見があるかもしれませんよ。
メイカーズマークなどのまろやかなもの、ワイルドターキーのようにリッチなもの、改めて飲み比べてみるのもよいのではないでしょうか。
まとめ
ショットグラスでキューッとやってターン、というイメージがあるのは、昔はお酒を造る技術が未熟で、要するに不味かったためだともいいます。
味わえたものではないから流し込んでいた、ということです。
しかし、現在のバーボンは非の打ちどころのない完成品ばかりです。
もしも野暮なばかりのイメージをお持ちでしたら、一度改めてその実は複雑で繊細な味わいを楽しんでみることをおすすめします。