フルーツ・ブランデー
ブランデーは果実の醸造酒からつくる蒸留酒の総称です。
ブランデーには、ワインからつくるグレープ・ブランデーと、ぶどう以外の果実酒からつくるフルーツ・ブランデーがあります。
りんご、チェリー、すもも、木苺、洋梨など様々な果実でつくられています。
なかでも生産量が多いのが、りんごからつくるアップル・ブランデーで、日本でも生産されています。
他にも製造する国や地方、原料や製造製法によって様々なブランデーがつくられており、フルーツが持つ独特の個性を楽しむことができます。
カルバドス:アップル・ブランデー
フランスのノルマンディー地方でつくられる、りんごを原料とする蒸留酒。
この地方特産のりんごから作った醸造酒(シードル)を2回蒸留し、オーク樽で熟成されます。
カルヴァドスという名称は1790年に名付けられ、世界で最高のリンゴ酒として知られています。
ただし、ノルマンディー地方以外でつくられるりんごの蒸留酒はカルヴァドスと称することはできません。
フランスの原産地呼(AOC)法の審査を合格しないものはアップル・ブランデーになります。
カルヴァドスの語源は1588年にノルマンディ沿岸で英国艦隊と戦ったスペインの無敵艦隊アルマーダの船名から来たと言われています。
カルヴァドスのおすすめ銘柄
デュポン オル・ダージュ
カルヴァドスのおすすめはデュポン オル・ダージュです。
ノルマンディー地方のペイドージュの名門・デュポン家が製造しています。
デュポン家はペイドージュに約27ヘクタールのりんご畑を所有し、厳選されたりんごから造られるカルヴァドスは濃い液色で、フレッシュな香りとバランスのよい味わいが特徴です。
フランスの高級レストラン、ホテルの大半が取り扱っているカルヴァドスで、イギリスの高級百貨店ハロッズやフォートナム&メイソンでも扱われています。
クールド・リヨン ポム・プリゾニエール
次にクールド・リヨン ポム・プリゾニエール がおすすめです。
春先から小さいりんごを瓶の中に入れて、瓶の中でりんごの実を成長させています。
成熟してから果実を瓶の中に切り落として、カルヴァドスを注ぎ込むノルマンディーの古い伝統技術です。
このようなカルヴァドスをポム・プリゾニエール (閉じ込められたりんご)とよびます。
樽で5年間熟成されたカルヴァドスと瓶の中に入ったりんごの風味が調和して、素晴らしい味わいです。
キルシュヴァッサー:チェリー・ブランデー
キルシュヴァッサーはドイツのシュヴァルツヴァルト地方の名産品で、世界中で高い人気のお酒です。
キルシュはチェリー、ヴァッサーは水または酒の意味です。
小粒で糖分の高いブラック・チェリーを摘み取って発酵させ、それを単式蒸留器で蒸留してつくられます。
樽熟成によって液色が変化するのを嫌い、磁器系の容器で貯蔵するため、無色透明のフルーツ・ブランデーになります。
ポピュラーな飲み方はストレートで、爽やかな香りとチェリーの甘みが口に残ります。
キルシュヴァッサーで体が熱くなったところで、ビールを飲んでアルコールを希釈するのが本場ドイツの飲み方です。
3-タンネン キルシュヴァッサー
民族衣装の少女がラベルの3-タンネン社のキルシュヴァッサーがおすすめです。
夏期にしか採れない完熟したチェリーを選んで、キルシュヴィッサー1本に最大12kg、約3000個のチェリーを使用しています。
醗酵後、小型の銅製ポットスチルで2回の蒸留を行います。
完熟チェリーの爽やかさと独特の重厚で深い風味がありますので、グラスも冷やして飲むのがおすすめです。
また、素材の個性を引き出し、個性を引き立てるため、お菓子の風味づけに最適です。
スリヴォヴィッツ:プラム・ブランデー
スリヴォヴィッツは西洋スモモから造られる蒸留酒で、主要な製造国はチェコ、スロバキア、ポーランド、ハンガリー、ブルガリアなど東欧諸国です。
ほとんどが生産国で消費されますので、馴染みは薄いですが、世界的に人気の高いお酒です。
製造方法は、原料となる西洋スモモを種子ごと潰して圧搾し、砂糖やでんぷんを加えて発酵させます。
得られた醸造酒を蒸留して、さらに熟成させています。
ウォッカと呼ばれるぐらいアルコール度数が高い銘柄もあり、製造方法も細かい決まりはなく、地域によって様々です。
シュペヒト スリヴォヴィッツ プラム
スリヴォヴィッツの主な生産国は東欧ですが、日本で入手しづらく、入手しやすいドイツのシュペヒトのスリヴォヴィッツがおすすめです。
シュペヒトは1910年創業のドイツを代表するブランデーやリキュールのメーカーで、キルシュヴァッサーも有名です。
東欧産の良質な西洋スモモを醸造した後、蒸留してオーク樽で熟成させたプラム・ブランデーです。
プラムの風味豊かな淡い琥珀色のブランデーとして人気があります。
アルコール度数は40%。
まとめ
日本ではブランデーにフルーツを漬け込んだお酒をフルーツ・ブランデーとよんで、家庭で簡単につくれるお酒として流行しています。
グレープ・ブランデーに、果実を漬け込んでフルーティーに味付けするもので、漬け込む果物を変えれば、ブランデーをいろいろな味に変化させて楽しめます。
通常のグレープ・ブランデーだけでなく、今回ご紹介したフルーツ・ブランデーをベースのお酒として利用してみるのも面白いのではないでしょうか。
他に、アプリコット(杏)・ブランデーもあります