日本酒はやはり灘の生一本ですね

日本酒

菊正宗 嘉宝蔵 灘の生一本 生もと純米 1800ml

江戸時代後期、灘の清酒は絶大な人気を誇りました。

その男性的な風味は江戸っ子の気質に良く合い、生一本という言葉の響きとぴったり一致しました。

偽物が出回るようになると、灘の生一本は特別な日本酒を意味するようになり、原産地証明として酒樽に刻印が押されました。

現在、灘五郷(兵庫県神戸市の東灘区・灘区と西宮市)の、一つの醸造所だけで醸造した純米酒を「灘の生一本」と呼んでいます。



灘と酒造りの歴史

江戸時代初期は、酒造りは伊丹市や池田市で盛んに行われ、江戸向けの酒造地域として繁栄していました。

灘で本格的に酒造りが始まったのは寛永年間(1624~45年)で、伊丹の雑喉屋(ざこうや)文右衛門が西宮で酒造りを始めたのが最初とされます。

灘が発展する契機となったのは、江戸時代中期に酒造業者に対して出された酒造米の買い上げを奨励する勝手造り令という規制緩和策でした。

港に近く、六甲山からの河川も多く、六甲山から寒風が吹き抜けるなど日本酒を造る好条件がそろっていた灘は一気に躍進しました。



水車による精米

古くは、足踏み型の精米機を使用して臼に入っている米を、足の力でつく原始的な精米方法でしたが、18世紀後半から六甲山系の急流を動力とした水車精米が始まりました。

灘地域は住吉川、石屋川や都賀川など流れの速い河川が多く、早くから水車精米が取り入れられました。

これにより大量の米が精米でき、精白度合いも高くなりましたので、キリッとした風味の酒造りが可能になりました。

水車精米は人力の足踏み精米法を圧倒し、19世紀前半には歩合70%の精米が可能になったといいます。

丹波杜氏

丹波杜氏は、南部、越後とならんで日本三大杜氏の一つといわれます。

江戸時代初期、伊丹や池田で酒造りをしていましたが、江戸時代中期以降、伊丹や池田から灘に移動し、日本酒造りにその高い技術力を発揮して灘を一大生産地に押し上げました。

杜氏は酒蔵で働く蔵人(農閑期の出稼ぎ農家)たちの長で、酒蔵ごとに集団として働いて酒造りの技術を競っていました。

明治以後、丹波杜氏は地方の日本酒造りも指導したといわれています。

灘の寒造り

江戸時代になっても日本酒は、秋の彼岸から翌年の春まで長期間造られていました。

仕込む季節の順によって酒に名前がつけられ、彼岸酒、間酒、初冬の寒前酒、厳冬の寒酒そして春先の春酒とよばれました。

旬に仕込まれた美味しい酒ということで、寒酒の価格が最も高く、寒前酒がこれに次ぎました。

最も寒い時期に行われる酒造りは、雑菌の繁殖が抑えられ、もろみの温度も制御しやすかったため、酒造条件として理想的です。

寒(酒)造りの技術は江戸中期に完成し、灘は寒造りに大きく舵を切りました。

肌を刺すような六甲山からの寒気を取り入れるため、酒蔵は窓を北向きに配置し、棟を東西に伸ばした形で建てられました。

宮水

江戸時代後期に山邑(やまむら)太左衛門によって宮水(みやみず)が発見されました。

宮水は西宮神社の南東300mのところに湧き出しています。

着色して香味を悪くする鉄分が少なく、酵母の増殖に欠かせないリンやカリウムを豊富に含んだ硬水です。

宮水の成分と酒造りとの関係については未知なことが多いそうですが、宮水を使うと発酵が進んで辛口でキレのある味になると言われています。

一般に日本酒には軟水が使われることが多く、硬水で酒造りをしている地域は全国でも珍らしく、灘の男酒と評される一因です。

十水仕込み

灘は水にも恵まれました。

水車で大粒の米を精米し、発酵がよく進む宮水を使って、蒸米1石(約180?)に対し1石の水加える十水仕込み(とみずしこみ)と称される技法を確立しました。

容積比で1:1の仕込みは、他の地域よりも仕込み水の割合が高いため、美味しい日本酒が大量に造れるようになったのです。

江戸への搬送

日本酒の大消費地・江戸に海上輸送するために便利な沿岸部に醸造所を作りましたので、兵庫の津などから大量の酒樽を樽廻船によって輸送ができました。

江戸に入荷する日本酒の約8割は上方からのもので、そのうち半分は灘の酒といわれていました。

樽廻船は酒を専門に運ぶ帆船で、兵庫から紀伊水道、熊野灘、遠州灘、相模湾を経て江戸へに平均12日間で到着していました。

灘五郷

灘五郷とは、西宮市今津から神戸市灘区新在家までの沿岸12kmの日本酒の生産地域をいいます。

東から今津郷・西宮郷・魚崎郷・御影郷・西郷の五つの郷を灘五郷とよんでいます。

おすすめの灘の生一本

灘五郷で造られた、一つの醸造所だけで醸造した純米酒を「灘の生一本」と呼んでいます。

灘五郷酒造組合に加盟する9社が、発売した統一銘柄「灘の生一本」がおすすめです。

兵庫県産の酒造好適米だけを使い、各蔵元が醸造技術や個性を競います。

精米歩合やアルコール度数が蔵によって異なりますから、各社の味の違いが楽しめます。

甘辛、味わいと香りの3項目に評価をつけ、ラベルに表示してあります。

9社は大関、菊正宗、剣菱、櫻正宗、沢の鶴、道灌、日本盛、白鹿、白鶴です。

まとめ

日本酒は糖化と発酵を同じ樽で同時に行う並行複発酵という高度な醸造技術で製造され、醸造限界に近いアルコール度数が実現されています。

灘は江戸時代から、次々に酒造技術を確立し、日本酒の一大生産地として発展してきました。

そして今なお、多くの酒蔵を擁し、生産量においてトップを保っています。

近年のSAKEブームで、日本酒の輸出量は右肩上がりで成長を続けています。

世界中からnadaのsakeと呼ばれる日が来るのが楽しみです。

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