造りを知ればもっと日本酒が好きになる!
日本酒が大好きだけど、その造り方はご存知でしょうか?
お米から造ったとは思えない香りや、甘かったり辛かったりと種類によって味が変幻自在に変わる不思議なお酒が日本酒です。
味や香りの幅が広いからこそ、好きになる人も多いですがその造る工程は知っているようで知らない方も多いと思います。
そんな方に向けて今回は日本酒の製造工程を簡単にご紹介します。
目次
日本酒造りのベースとなるお米
日本酒はお米をベースに造られています。
正確には、お米、水、麹菌、酵母から造られるのですが、麴菌もお米が必要になりますし、製造工程の中で何度もお米を使うことが多いため、お米はとても重要です。
日本酒に使われるお米といえば山田錦が有名ですが、それ以外のお米ももちろん使われています。
地元のお米を使っていたり、契約している農家さんと日本酒用に特別栽培されたお米なんかも使われます。
例えば京都伏見の酒蔵ですと、「京の輝き」といったお米であったり、「祝(いわい)米」という一度は生産されなくなった品種を改良させて作ったお米なんかも使われています。
お米の種類によって味や香りが変わるのはもちろんのこと、製造工程においてもお米によって扱い方が変わってきます。
お米は業者さんから30キロの米袋で大量に送られてくることもあれば、600キロの巨大な袋で入荷されることもあります。
入荷したお米をまずは洗うところから
まずは入荷されたお米を洗います。
お米はすでに精米されたものが入荷されるので、見た目は真っ白でキレイです。
一般家庭で食べられるお米よりも精米されていますので、やはり粒が小さめですがそこまで大きな差はありません。
お米は酒蔵によって手洗いされる蔵もありますが、現在は機械で洗米されることが一般的です。
洗米する機械はいくつか種類があり、水が渦巻く中にお米を注ぐと遠心力でお米が現れてポンプを通じて出てくるものもあれば、大量のお米を機械の中で水と一緒に圧縮をして洗うものなどがあります。
手洗いに比べるともちろん効率がよく、1時間あたりで600~700キロ、それ以上の量を洗うことが現在は可能です。
大量に洗えて時間を短縮できる分、少量しか洗えないけどキレイに洗うことができる機械などもあるため、洗米したお米の用途に応じて洗い方を変えたりもします。
お米に水を吸わせる浸漬(しんせき)
洗ってキレイになったお米に水を吸わせる作業を浸漬と呼びます。
一般家庭でもお米を美味しく炊くために、少しお米に水を吸わせてから炊くと思います。
それと同じ要領で、お米にどれだけ水を吸わせるかによって蒸されたお米の状態が変化していき、米麴造りに最適な蒸米となったり、醪に合った蒸米になったりと影響していきます。
洗米されたお米はすぐに水に漬かります。
もちろん漬かるお水は井戸や地下水、湧水といった日本酒に適したお水が使われ、時間にして10分前後です。
使う用途やお米の種類によって浸漬時間は異なるため、その時間を秒単位で管理して最適なタイミングで水から上げるのはまさに職人技で杜氏が成せる技術となっています。
お米が水を吸ってくると、外側から白くなっていき中が半透明になっているため、「お米の目玉の大きさを見て浸漬度合を判断する」とも言われています。
炊くのではなく、お米を蒸す
浸漬したお米は一晩寝かされてから翌日に蒸されます。
蒸す際には甑(こしき)と呼ばれる大きな釜とお米を包むネットが使われます。
蒸される時間は1時間程度ですが、その日の天候やお米の状態に応じて時間を微調整させながら蒸されるのが一般的で、これも杜氏の経験によることが多いです。
蒸された米を見てみると、外側は固くつるつるしており中は柔らかくふっくらしています。
そのため、家庭で炊かれるお米のようにふっくらモチモチの白米とは異なり、少し固めのお米になりますがよく精米されているため、食べてみると雑味のない味と香りが口に広がります。
米麹づくりは赤ちゃんを育てるように
蒸されたお米からいよいよ米麹が造られます。
米麴は後に説明する酒母や醪でも使われるためとても重要です。
米麴は蒸されてから、一旦適温まで下がった蒸米に麴菌の胞子が振りかけられて造られます。
振りかけた後は勝手に増殖するのではなく、温度を小まめに管理しながら2日間かけてじっくりと造られます。
1日目は麴菌の数も少なくまだまだひ弱であるため、数時間おきに温度管理をして最適な状態に保ち、一度寝かせていたお米を手でほぐし広げて温度ムラをなくし、酸素に触れさせてあげながら麴菌の活動を活性化させていきます。
2日目になると麴菌が増殖していき、お米の表面も白くなってきます。
こういなってくると1日目に比べて温度も高く、元気な米麴ができあがります。
できあがった米麴は乾燥させて酒母や醪に使われます。
日本酒の核となる酒母
酒母は読んで字のごとく、お酒の母で日本酒の香りや味を決める、いわば日本酒の素づくりです。
酒母は水と米麴と蒸米と酵母から造られます。
酒母を段階では酵母の増殖が主な目的です。
蒸米も米麴も入っているのでお米のでんぷんが米麴によって糖化され、その糖を酵母が食べてアルコール分解されるのですが、この段階では量も少ないため日本酒っぽさは感じません。
酒母も数日間かけてじっくりと造られ、都度温度管理されながら大切に酵母の増殖を促進させていきます。
出来上がった酒母からは既に芳醇な香りがして、新鮮な日本酒だ!
と日本酒の断片を実感することができます。
この酒母を核として醪が造られていきます。
元気な酵母が育っているため、ぱっと見は真っ白なのですがところどころ泡立ちが見られるのも特徴です。
いよいよ醪(もろみ)仕込み
酒母ができ上がると、いよいよ醪の仕込みです。
醪は大きく3回に分けて仕込まれるため、三段仕込みとも呼ばれます。
酒蔵では1回目を添え仕込み、2回目を仲仕込み、3回目を留仕込みと、それぞれ呼んでいます。
それぞれの仕込みで、水と蒸米と米麴をタンクに入れていき醪をつくっていき、回が増えるごとに蒸米や水の量が増えていきます。
一気に仕込んでしまうと、酵母がうまく活動してくれなかったり、雑菌が入ってしまうといった理由から3回に分けて仕込みが行われます。
1回の仕込みで数百キロの蒸米が投入されることもあるため、温度ムラができないように櫂(かい)と言われる棒状の道具でタンクをひたすらかき混ぜるのですが、これが日本酒造りをイメージする時によく出てくるシーンです。
実際は長い櫂を底の深いタンクまで伸ばしてかきまぜるため大変で、かつ麴菌や酵母が活発に活動してもらう温度にするための繊細な作業なのです。
醪が絞られて日本酒が生まれる
仕込まれた醪は半月~1カ月かけて発酵していき、最適なタイミングで絞られます。
絞るタイミングは発酵の状況や杜氏の経験によって判断され、絞るタイミングによって味や風味が変わるため、タイミングを決めることも大きな仕事です。
絞られる際は、醪を布袋に注いで絞るやり方もありますが、現在はヤブタと呼ばれる機械で絞るのが一般的になっています。
絞られた日本酒は菌が生きた状態のまま、生酒として瓶づめ出荷される場合もあれば、火入れをして菌の働きを止めてから水を入れて味を調整して出荷する場合もあったりと、様々な手法で私たちの手元に届きます。
日本酒は米麴や酵母の状態が重要となってくるので、そんな菌の本来の味を感じたい方には火入れ前の生酒がおすすめです。
まとめ
今回は簡単に日本酒造りの工程を紹介させていただきました。
日本酒造りはお米がベースですが、米麴や酵母といった菌も重要で、発酵の過程が二段階あるお酒づくりは世界の中でも珍しく、だからこそ色々な味や香りを表現することができます。
味や香りを知れば知るほどハマっていく日本酒ですが、造りについても知れば知るほど面白く、逆に酵母の力に不思議だなと思ったり、生命の力ってすごいなと、感動することもあります。
たまには日本酒の造りも知ってみて、より日本酒のことを好きになってみても良いのではないでしょうか。